OA研究所

OA研究所 松﨑希誉文様 / 小原義徳様 / 峰松久雄様
 

生成AIに感じる可能性

―製造業における技術継承とナレッジマネジメントの革新

当社は長年、ネットワーク機器を中心とした開発と生産を手がけるメーカーとして、お客様のニーズに応える製品を生み出してきました。LANスイッチやHUB、IoT機器など、高度な技術を要する製品の開発・製造において、熟練技術者が持つ暗黙知や過去のトラブル対応経験は、まさに企業の財産そのものです。 しかし近年、労働人口の減少と技術者の高齢化により、この貴重な技術やノウハウをどう次世代に継承していくかが大きな課題となっていました。分厚いマニュアルを読み込むだけでは理解が難しく、ベテラン技術者に質問が集中してしまう。新入社員の育成には時間がかかり、突発的なトラブル対応では特定の人材に依存せざるを得ない状況が続いていました。 そんな中、生成AIという技術に出会い、大きな可能性を感じました。膨大なマニュアルや過去のトラブル事例から、必要な情報を瞬時に引き出し、対話形式で分かりやすく回答してくれる。これは単なる検索ではなく、まるでベテラン技術者に質問しているかのような体験です。特に、インターネットに接続できない工場環境でも使用できるオンプレミス型の生成AIであるPanorama AI Boxは、当社のセキュリティポリシーとも合致し、安心して導入を検討することができました。

Panorama AI Boxの導入効果

―「3分で把握」を実現する対話型マニュアルシステム

SDTさんと共に進めたPanorama AI Boxの導入プロジェクトでは、当社の業務課題に合わせて段階的に機能を実装していきました。 まず第一段階として取り組んだのが「マニュアル要約+詳細ガイド」の実装です。これまで新入社員は、特定の部品の仕様やエラーコードの対処法を調べる際、膨大なマニュアルの中から該当ページを探し出す必要がありました。しかしPanorama AI Boxを導入したことで、自然な言葉で質問するだけで、必要な情報が即座に提示されるようになりました。「このエラーコードはどういう意味ですか?」「この部品を交換する手順は?」といった質問に対して、関連する情報を統合して分かりやすく回答してくれます。新入社員が作業手順や部品交換の理由を3分で把握できるようになったことは、大きな前進です。 第二段階では「対話型トラブルシューティング」を実装しました。過去の不具合報告や修理ログをデータベースに取り込むことで、新たなトラブルが発生した際、症状を入力するだけで類似事例を探し出し、原因と対応手順をチャット形式で提示してくれます。これにより、ベテラン技術者の暗黙知がAI化され、対応時間の短縮につながっています。

―システムの専門家でなくても使いやすい操作性

Panorama AI Boxの優れている点は、その使いやすさにもあります。生成AIのシステムというと難しいものを想像しがちですが、実際には直感的に操作できる管理画面が用意されており、ITの専門家でなくても現場の担当者自身がデータの追加や調整を行うことができます。 また、AIがなぜその回答を行ったのか、どのドキュメントを参照したのかを確認できる機能も重要です。これにより、回答の妥当性を検証し、必要に応じてデータを改善することで、継続的に精度を高めていくことが可能です。製造現場で使用するツールとして、この「説明可能性」は信頼性を担保する上で欠かせない要素だと考えています。

SDTへの期待と今後の展開

―技術力とスピード、そして「ものづくりへの理解」

SDTさんとの約半年間のプロジェクトを通じて、最も印象に残っているのは、彼らの「スピード感」と「ものづくりへの深い理解」です。 生成AIという新しい技術領域において、私たちが抱える製造現場特有の課題を素早く理解し、具体的な解決策を提案してくださいました。単に技術を提供するだけでなく、当社の業務フローや現場のニーズを丁寧にヒアリングし、一緒になって最適な活用方法を検討してくれる姿勢は、パートナーとして大変心強いものでした。 特に印象的だったのは、検索精度に課題があった際の対応です。ベクトル検索と全文検索を組み合わせたハイブリッド検索の実装や、日本語形態素解析の最適化など、技術的なアプローチで課題を解決してくださいました。このような高度な技術力と、製造現場の実務に即した提案力の両立が、SDTさんの大きな強みだと感じています。 また、プロジェクト進行中も定期的に勉強会を開催していただき、生成AIの最新動向や効果的な活用方法について情報提供をしてくださったことも、社内での理解を深める上で大変役立ちました。

―社内活用から顧客価値創出へ

今回のプロジェクトでは、まず社内での業務効率化を実現することができました。マニュアル参照時間の短縮、トラブル対応の迅速化など、具体的な数値として成果が現れています。 しかし、私たちの目標はこれだけに留まりません。次のステップとして、Panorama AI Boxを当社が製造する製品やサービスに組み込み、お客様への新たな価値提供を目指しています。 特に注力しているのが「オフライン環境向けサポートシステム」の開発です。工場など、インターネットに接続できない環境で稼働する機器において、マニュアル参照やトラブルシューティングを現地で即座に行えるシステムは、大きな付加価値となります。症状に基づいた故障診断の補助、緊急時の操作手順のステップバイステップ表示、必要な交換部品の特定など、これまで専門技術者の現地派遣や電話サポートに頼っていた対応を、AI支援により大幅に効率化できる可能性があります。

―市場への展開

SDTさんには、単なるシステム開発パートナーとしてだけでなく、当社の顧客への生成AIサービス展開における構想策定や営業支援についてもご協力いただいています。業界特有のニーズを理解し、それに応える製品・サービスを共同で開発していくことで、新たな市場を切り開いていけると確信しています。 生成AIは、単なるツールではなく、ものづくりの未来を変革する可能性を秘めた技術です。SDTさんと共に、その可能性を最大限に引き出し、製造業の課題解決と新たな価値創造に挑戦し続けていきたいと考えています。